キャスリン・ビグロー監督最新作の「デトロイト」を観てきました。
過度な人種差別がもたらした悪夢のような実話を映画化した作品です。
公式サイトでは「サスペンス」と称されていますが、私は今までに観たどのホラー作品よりも恐怖を感じました。
本作は、物事の正当性や道理などを一向に構わず、暴力という行為によって人としての尊厳をいとも容易く奪ってゆく様が描かれています。生ぬるい環境で生きる我々にとって、どこかで溜飲の下がる展開を祈るように待ち望みますが、本作には救いが用意されておりません。そしてそれこそが現実なのだと突きつけてきます。観た直後は食事も喉が通らなくなるほど落ち込みました。
そういった作品ですので、人へあまりお勧めしづらいのも確かですが、私個人として心から「観て良かった」と思いました。今もなお作中の登場人物は何処かで生活を営んでいること、そして本作で問題提起されている内容は、この現代に残存し、人々を悩ませ続けていること。
たとえ知識として知り得たとしても、ここまで胸に響く事はなかったでしょう。これらを、映画という媒体を通じて知ることが出来て本当に良かったと思います。そして、これこそが「映画体験」の最たるものであると感じます。