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ほとんど更新しない備忘録ブログ

自分の昔の作品を振り返ってみる

なんか急に自分の作品を見漁ってたら懐かしくなってきたので、当時の記憶と今みた雑感を振り返ります。

 

ラットが死んだ(2013)

FRENZ 2013に出展し、二日目夜の部のトリ一つ前に上映いただいた作品。

制作期間も他と比べて圧倒的に長く、歌唱者の島爺氏のお陰もあって知名度も高く*1、名実ともに僕の代表作。10年経った今見返しても当時の自分はよくやったと思う。

制作期間は4月から9月の半年間。更に原曲で引用されている海外文学「ペスト/カミュ著」を読破するのに数ヶ月。なので総合して9,10ヶ月くらい?拙い画力をカバーするように試行錯誤を繰り返しつつ、工夫と物量でなんとかした映像。普段は完成に1ヶ月かけることがほぼほぼ無い自分としては異例の作業期間・作業量。

当時の僕はmaxcaffyさんという映像作家を師と仰いでいて、彼は「神は細部に宿る」を体現し、文字通り「映像に魂を注ぎ込む作風」をお持ちだった。故に、自分もかくありたいと感じていたために、工数を度外視することで出来た作品が本作である。*2

maxcaffy氏の作品はほとんどオンラインに残されていないので2010年の作品にはなりますが唯一残ってるこちらを紹介します。(※投稿者は作者ではありません。無断転載を紹介するのはどうかと思いますが、本当にこれしか残っておらず…)

 

テトロドトキサイザ2号(2014)

FRENZ 2014に出展し、二日目夜の部のトリを飾らせていただいた作品。

当時は意識していなかったが、今思えば「僕の強みがエンターテイメント性にある」ということを自覚するキッカケになった作品かもしれない。とにかくラスサビ前の間奏がお気に入りで、音同期の気持ちよさやラスサビの開放感などは今見ても好き。相変わらず、画力だけは残念だが…画力がないクセに絵を主体とした映像ばかり作ってるせいでクオリティが頭打ちなのは自覚している。

本作の楽曲は言わずと知れたギガさんによるものだが、本年のFRENZにはたまたま同ユニットの映像クリエイターであるお菊さんが同じ部に出展していた。そしてお菊さんがギガさんを連れてきていたので、僕の二次創作を作曲者本人に直接見ていただくという奇跡が発生した。上映後にお菊さんがわざわざ僕のもとへ来てくださり、お話できたのも嬉しかった思い出。

余談も余談だが、この年から付き合いたてだった彼女に対して「僕は映像を作っていて、毎年FRENZという上映イベントに参加していて、そのイベントは僕にとってとても大切だから、1,2ヶ月くらい映像を作るために会えなくなるけど、ごめんね。」と言って作業に集中したことをうっすら記憶している。本当に酷い。「試合が控えてる」とか「演奏ライブが控えてる」とかならまだ理解してもらえるかもしれないけど、「映像上映イベント」て。得体が知れなさすぎだろ。聞き分けが良すぎる子だったので協力してくれたけど、当時フられなくて本当に良かった。(その子と結婚しました)

 

drop pop candy (2015)

FRENZ 2015に出展し、二日目深夜の部の第4部トップで上映いただいた作品。

本作にはあまり良い思い出が無い。所感としては、2014年に作ったテトロドトキサイザ2号から進化も変化もない作品になってしまったなという印象。それだけなら自分の中の反省だけで済むけれど、2015年のFRENZは杉本くんの怪作「映像制作を助けてくれ」が上映された伝説の年だった。閉幕後は誰もが口を揃えて「映像制作を助けてくれ」の話しかせず、僕の作品に言及してくれる人なんてただの一人も存在しなかった。本当に悔しくて、数日ほど実家に帰省して頭の整理をしたくらい悔しくて、来年は自分が主人公になってやると強く決意した。

ただ唯一この作品に対して残っている嬉しい記憶は、ぬるてまが上映直後に「こんな可愛い作品を作れるなんてズルい」と言って泣いてくれたこと。最近になってようやく久しぶりに見返したけど、例によって画力はともかく、全然悪い作品ではないなと思えて良かった。

 

きよし、この夜(2016)

FRENZ 2016に出展し、全作品の大トリで上映いただいた作品。

(WEB公開終了)

「創作」そのものをテーマへ掲げることに挑戦した作品。明確に昨年のリベンジでもあり「映像制作を助けてくれ」へのアンサーでもあり、自主制作讃歌でもある。

FRENZ 2016の大トリを飾ることとなった本作は上映後に万雷の拍手に包まれ、その力強い拍手があまりにも長い時間鳴り止まなず、司会のやんわり氏が進行のために制止せざるを得ない状況だった。前田地生は隣で鼻をすすっていた。僕はそれらの光景を登壇前の舞台袖から眺めていて、あまりの嬉しさに口を押さえながら半泣きになった。上映後、二階席にて脱力した気分で休んでいたらyama_koさんに呼び出され、なんと二階席の入り口付近に「僕へ感想を伝えるための長蛇の列」が作られていた。

正直、画力は相変わらずで作品のクオリティとしては大したものではなく、ただあの場所で、このテーマで、拙いながらも僕が真摯に向き合ったことで、多くの方の心に届いたのかなと自負している。あとは僕の大好きなアーティストであるRHYMESTERの楽曲があまりにも良すぎるというのもあったと思う。

「映像制作を助けてくれ」は本業と自主制作の二足草鞋による辛い部分をあるあるネタとして抽出しながら、あまりにも過剰でマッドな作家性へ結びつけることに成功した快作だ。だったら僕は「それでも自分達が創作と向き合うのを辞めない理由」を真っ向から表現してやろうじゃないか! という魂胆がこの作品にある。

そうはいっても作品を見返しながら、「今思えばいくらなんでも杉本君にファイティングポーズを取りすぎでは?」と思い、笑ってしまう。ここまで来たらもう当てこすりである。ただ自分の中で去年のリベンジは見事成功して、あらゆる心の柵(しがらみ)を清算することが出来たのは良かった。*3画力は相変わらずお粗末なものだが、久しぶりに見返した本作は記憶していたより何倍も魅力的な作品だと思えた。ちなみに、僕が前年に「杉本ぶっ潰す」と神に誓ったように、翌年の初詣にyama_koさんが「ネガクズぶっ潰す」と神に誓ったというエピソードを耳にして、震えた。

 

超宇宙意思(2017)

FRENZ 2017に出展し、二日目深夜の部の第4部トップで上映いただいた作品。

2016年に全てをやりきった僕が翌年に拵えたのはエンターテイメント極振りの映像だった。正直、第1回から全ての部に足を運んでいる僕の記憶の限り、FRENZ史上、会場が一番盛り上がったのはこの映像が上映された時だと思っている。もう、笑い声とか手拍子とかは当然のことながら、サビの部分なんかは皆もう「うおおおおおおお!!!!」とか雄叫びをあげていた。上映中なのに。

ただ当の本人である僕はこの作品の直前に上映された機能美pの「平面惑星」という名作に心打たれてずっと余韻に浸っていたかったので、大盛りあがりの会場に対して「お前ら機能美pの余韻を潰すなよ!!!!」という気持ちになっていた。壇上でも話したかったテーマ等はすっかり頭から抜け落ちて機能美pへの謝罪に終始していた。

某氏が「そこは『機能美pより圧倒的に俺の作品のほうが偉い』でしょ!」と僕に言っていたが、今思えばそのスタンスのほうが格好良かったなとは思う。っていうか、自分の作った作品であんなに沢山の人が大狂乱の大盛りあがりをしてくれるという贅沢な上映体験、本来なら「気持ちいい~~~~!!!」って感じだったろうにもったいないことをしたなとは思う。ただ機能美pの平面惑星はそれくらい本当に良かったんです。

尚、その後楽曲を拝借したwebnokusoyaroが本作を大変気に入ってくれて公式コラボを何度もする仲になり、今ではすっかり飲みに行く大の仲良し・マイメンと化していて、そういった意味でも本作を完成させた甲斐があるなと思う。

 

回る秋うさぎ(2018)

FRENZ 2018に出展し、二日目深夜の部の第4部トップで上映いただいた作品。

この作品に関しては当時別記事で嫌というほど語り尽くしたことがある。

ひとつエピソードを付け加えるなら、沼田友さんという映像作家さんのブログにて毎年「感銘を受けた作品選」という記事が年末に公開されるのだが、2018年の記事で本作が掲載されていたことが大変嬉しかったのを覚えている。だって、沼田さんって物語を深く深く掘り下げるのを得意とする作家さんで、僕のように表層的な部分だけを華やかにする作風なんて見向きもしてもらえないと思っていたから。(自虐が過ぎるかな?)

とにかく嬉しかったです。

 

以上、そんなところです。長々とありがとうございました。

 

*1:YouTubeで500万再生突破、ニコニコ動画で450万再生突破。

*2:「当時は」と記載はしたものの、無論今でも氏のことを憧れ続けてはいる。ただ現在の僕は映像に対して効率を追求する傾向にある(例:10時間かけて100点のものが作れるとして、2時間で90点が取れるなら2時間の手法でも良いと考える)。その思考はあまりにも氏のスタンスと異なるため、今の自分が彼を師と仰ぐのは無礼かと思っている。ちなみに今でもかなりの頻度で通話したり遊んだりしている。

*3:杉本君とは今でも仲良くさせてもらってて、VTuberフィンダーおじさんの生みの親としても度々お世話になることをこの時はまだ知らない。